原告の渡辺淳子さん(中央)と主任弁護人の川岸卓哉弁護士(右)

 

過労事故死損害賠償事件について 

1.事案の概要

     株式会社グリーンディスプレイに勤務していた渡辺航太さん(死亡 

   時24歳)が、2014年4月24日午前9時12分頃、横浜市都筑区の仕

   事場から自宅へ原付バイクで帰宅途上、川崎市麻生区の道路で、電柱に

   衝突し、脳挫傷、外傷性くも膜下出血となり、死亡した。

     両親の渡辺浩さん、渡辺淳子さんは、この事故は航太さんの過労が原

   因(前日は22時間勤務など)で、会社に安全配慮義務違反があったとし

   て2015年4月24日に損害賠償請求訴訟を提起した。 

  

 2.過労死問題と国民救援会 

国民救援会の支援事件として「過労死・労災・職業病」という分野があるように、これまでも現在も多くの過労死裁判を支援して来ている(埼玉・矢田部過労死裁判、愛知・鳥居公務災害裁判、愛知・マツヤデンキ過労死裁判、愛知・ソフトバンク過労死労災裁判など)。

           本件は、過労により病気や死亡に至るなど、過労と死亡が直接結びつ

   くもの(過労=死亡)ではないが、長期に及ぶ過労と直前の睡眠不足と

   交通事故の因果関係がある(過労=交通事故=死亡)で、過労死と判

   断される事件である。

 

 3. 過労と交通事故について 

(1)過労による交通事故と雇用者の安全配慮義務 

2003年3月に鳥取大学病院の医師が長期の過労勤務の上、徹夜’での手術終了後別の病院へ移動中、直線道路で対向車と衝突して死亡した事件で、鳥取地方裁判所は、過労と交通事故の因果関係を認定し、大学側に安全配慮義務違反があったとして、損害賠償を認めた(2009年10月16日 判決)。 

(2)睡眠と交通事故の因果関係 

労働安全衛生総合研究所の上席研究員の高橋正也医学博士によると、過労や睡眠不足と交通事故の研究の中で、連続15時間勤務で酒気帯び運転と同等の作業能力になるとか、注意力・反応速度の低下を明らかにしている。渡辺さんの場合も前記、鳥取大学病院の事故と同様、長期の過労状態が記録上明らかであり、前日の稼働時間が22時間であること、事故発生状況から、事故と業務の過労と因果関係があるものと判断できる。 

(3)被告会社の安全配慮義務違反 

  訴状では以下のように被告の安全配慮義務違反を述べているが、本件も鳥取大学医学部の事例と同様、被告の安全配慮義務違反と交通事故の因果関係もあるものと判断できる。

 

以下、訴状より抜粋。

 

「被告会社は、亡航太が極度の睡眠不足になることを予見し、業務の軽減を図るなどの適切な措置を講じることにより、亡航太が極度の疲労状態、睡眠不足に陥ることを回避すべき具体的な安全配慮義務を負っていた。しかしながら、被告会社は、上記適切な措置を講じることなく漫然と放置し、長期間に渡り過重な業務に従事させ、とりわけ本件事故前3日間には極度の睡眠不足を招来するような態様で業務に従事させ、本件事故前日は徹夜で従事させていたものであり、被告会社には上記安全配慮義務違反があったことは明らかである。」

 

なお、被告会社の業務は航太さんに限らず、深夜から早朝に及ぶ作業が多いことから、通勤に車を使用せざるを得ない実態であることから、交通事故が発生する可能性が高くなることは明らかであるので、それに対する対策を講ずる義務が会社にはあったと言える。

 

 4.被告会社の反論 

被告のグリーンディスプレイは、訴状に対して以下の通り因果関係と安全配慮義務違反を否定しているが、いずれも過労や睡眠不足と自動車運転の危険性を理解しないもので、理のあるものではない。

 

(1)航太さんは事故の4日前には二日間休暇をとっていたし、事故の前数日の労働時間は長くないので、過労とは言えない。

   (2)航太さんの運転が異常になったのはわず0.26秒と言う瞬時であって、それは

     他の要因で一瞬視覚を失ったか何かに気を取られていたなど様々な要因が考え

     られ、過労との因果関係はない。

   (3)会社は、事故のあった3日前から始業時間を遅らせるなどの配慮をしていた

     し、当日会社はバイクでの帰宅を指示していない。また、バイク運転に支障を

     きたすほどの状態であれば本人がバイクでの帰宅をやめるべきだった。従って

     会社の安全配慮義務違反はない。

 

5 裁判の状況

 

2015424日に横浜地裁川崎支部に提訴し、2016年3月24日に第6回弁論。

5月19日第7回 7月12日第8回 9月8日第9回 

 

6.支援運動

  2015年12月11日に「グリーンディスプレイの青年過労事故死裁

  判を支援する会」が設立され、国民救援会も事務局、役員とし

  て活動している。

訴状はこちら

訴状(渡辺淳子)記者公表用rtf.pdf
PDFファイル 293.2 KB

第一準備書面はこちら(訴状に対する被告の反論とそれに対する原告の反論)

第1準備書面.pdf
PDFファイル 372.9 KB

救援会神奈川県本部が支援を決定

日本国民救援会神奈川県本部は、原告と弁護団の支援要請を受けて、冒頭文書にある観点から2015年8月に本事件の支援を決定しました。

この決定を受けて、下記のように広く支援を呼びかけています。

 (画面をクリックすると拡大してごらんになれます)

原告の訴えを取り上げた新聞記事

  いずれも画面をクリックすると拡大してごらんになれます。

2015.10.04 しんぶん赤旗

2016.3.31 神奈川新聞

関連資料

■過労・睡眠不足と交通事故の関係などの論文、資料は下記をご覧ください。

 ・「不規則な深夜帯交替制勤務と使用者の安全配慮義務」

      小樽商科大学准教授 國武英生氏

 ・2012年11月30日 法制審議会刑事法部会議事録

 ・同上委員会資料「過労運転について」

         (労働安全衛生総合研究所 高橋正也氏)

 ・「眠気と交通安全」国際交通安全学会誌 Vol35 No1  2010

                            (労働安全衛生総合研究所 高橋正也氏)

 

■類似裁判判決

  鳥取地方裁判所判決(2009.07.10)

    過労睡眠不足と交通事故の因果関係を認めた鳥取医大病院事件